不動産を売却する場合の注意点

被相続人名義の不動産を売却する場合、一度、相続人に相続登記を行う必要があります。
相続登記を行う際に、在留邦人(海外在住の相続人)に不動産を相続させずに売却する場合と、在留邦人(海外在住の相続人)に不動産を相続させてから売却する場合で手続きが異なります。

在留邦人(海外在住の相続人)に不動産を相続させずに売却する場合

例えば、相続人がAとBの2人で、Bが在留邦人(海外在住の相続人)とします。
AとBとの間で、不動産を売却して、掛かった経費を差し引き、売却代金をAとBの2人で分けようと考えた場合、不動産を一旦Aに名義変更して、売却を行う方法があります。
この場合、単純にAに相続登記を行っただけで、後日、売却代金をAとBで分けてしまうと、AからBに対する贈与税の問題が発生するため、注意が必要です。
贈与税の課税を避けるために遺産分割協議書に、『不動産を売却して、売却代金をAとBで分ける』ということを記載する必要があります。この様な遺産の分け方を『換価分割』と言います。
但し、遺産分割協議書に、『不動産を売却して、売却代金をAとBで分ける』と記載するだけですと、不動産を誰の名義にするのかが分からないため、不動産の名義変更が出来ません。
そのため、以下の様に遺産分割協議書に記載する方法が考えられます。

遺産分割協議書

共同相続人である私達は、次の相続について、下記のとおり遺産分割の協議をした。

被相続人の最後の本籍 千葉県八千代市ゆりのき台一丁目35番地
最後の住所 千葉県八千代市ゆりのき台一丁目35番地
氏名 花霞太郎
相続開始の日 令和〇年〇月〇日

第1項 不動産はAが相続する。
※不動産は、登記簿のとおり具体的に記載します。
第2項 前項の不動産をAが速やかに売却して、売却代金をAとBで半分ずつ相続する。
※別途控除する費用・最低売却価格・売却期限等を具体的に記載することも出来ます。

換価分割については、法務局と税務署で見解が異なるため、理屈だけで書類を作成すると手続きが進まなくなることがあるため、要注意です。
例えば、遺産分割協議書に、次の様な記載をすると、相続登記は、法務局で認めてもらえません。

『不動産は相続人代表者Aの名義にする。』
『不動産は、売却のため、便宜Aの名義にする。』

とても分かり辛い話ですが、法務局では、仮に誰かの名義にするということを認めていません。Aに登記をするということは、不動産は、確定的にAのものと考えています。
代表者Aの名義にすると記載すると、他に本来の不動産の名義人がいることが明らかですので、本来の名義人全員を登記すべきということになります。
便宜Aとした場合も、他に本来の不動産の名義人がいることが明らかですので、本来の名義人全員を登記すべきということになります。
司法書士以外が換価分割に関する遺産分割協議書を作成した場合、上記の様な記載が散見され、登記が出来ず、再度遺産分割協議書を作り直さなければならないケースもあります。
遺産分割協議書の文言1つで、贈与税が課税されてしまったり、そもそも手続きが出来なくなってしまったりするので、注意が必要です。

在留邦人(海外在住の相続人)に不動産を相続させてから売却する場合

例えば、相続人がAとBの2人で、Bが在留邦人(海外在住の相続人)とします。
AとBとの間で、不動産を売却して、掛かった経費を差し引き、売却代金をAとBの2人で分けようと考えた場合、不動産をAとBの共有名義に変更して、売却を行う方法があります。
この場合、不動産の持分のとおり売却代金を分けることになり、とても分かりやすいです。
以下の様に遺産分割協議書に記載する方法が考えられます。

遺産分割協議書

共同相続人である私達は、次の相続について、下記のとおり遺産分割の協議をした。

被相続人の最後の本籍 千葉県八千代市ゆりのき台一丁目35番地
最後の住所 千葉県八千代市ゆりのき台一丁目35番地
氏名 花霞太郎
相続開始の日 令和〇年〇月〇日

第1項 不動産はAとBが持分2分の1ずつ相続する。
※不動産は、登記簿のとおり具体的に記載します。
第2項 前項の不動産をAおよびBが協力して速やかに売却し、売却代金をAとBで半分ずつ相続する。
※別途控除する費用・最低売却価格・売却期限等を具体的に記載することも出来ます。

相続手続きでの注意点は、在留邦人(海外在住の相続人)に不動産を相続させる場合、海外の住所については、日本語で記載します。例えば、アメリカ在住の方の場合、アメリカの住所をカタカナ表記で登記を行います。
在留邦人(海外在住の相続人)の方は、住民票がないため、在留証明書が住民票の代わりになります。

不動産を売却する際の注意点は、国内の方だけが相続する場合と異なり、在留邦人(海外在住の相続人)も不動産の売却手続きに関与する必要が出てきます。
具体的には、相続手続き以外に、売買契約書や所有権移転登記(売買)関係書類に記入が必要になります。
売買契約書については、仲介業者次第ですが、所有権移転登記(売買)関係書類については、現地の日本領事館等で在留証明書と署名証明書を再度取得して頂く必要がありますので、時間にゆとりをもって手続きを行う必要があります。

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